映画館に住みたい。

邦画を映画館で観るのが大好きな40代がtwitterでネタバレを書けずにblogへ流れてきました。

ネタバレあり/『騙し絵の牙』観ました

『騙し絵の牙』観ました。ネタバレを含むひとりごとを書きます。

公開初日(3/26)の18時過ぎの回で観ようと企んでいたのですが、ここで仕事を放り出したら人としてどうなんだ?ってレベルで忙しかったので、泣く泣く諦めて、3/27に観ました。これが結果的に良かった気がする…



まず、本筋とおそらく大して関係ないことで個人的に「好きだわー!」と思ったことがあって。
ジェンダー的な目線で観て、結構いい作品では?と私は思いました。
木村佳乃さんが小説薫風の編集長である江波を演じていますが、「女性編集長!」みたいな描写がない。ふつーに編集長として描かれてる。
松岡茉優さんが演じる新人編集者の高野は、若さゆえ…という描写はあるけれど、女性であることを押し出す描写がほぼない(一箇所だけ、若い女性であることを利用されてしまうシーンがありますが、あれはそういう見方を批判するためのシーンだと思います)。
編集会議のシーンも「女性として」みたいな意見を求めることがないですし、編集者からもそういうこと言わないし。
ジェンダー的にかなりフラットだと感じました。
(ただ、役員が全員男性って今どきあり得ないだろ!とは思いましたけど。ひとりくらい女性の役員入れるよね、普通)

次に、これまた、私だけだろうなと思う泣きポイントがあって。
速水が高野とワインを飲んでいた二階堂に収支の話をするシーンがあるじゃないですか。あのシーンでだばーっと涙が出てきてしまって。全然泣けるシーンじゃないんだけど。「結局そういうことなんだよ!!そこを無視してビジネスは成り立たないんだよ!!」って思っちゃった(公開初日に観に行くのを我慢して残業5時間頑張ってたのがここでぶわっと/笑)。


この先はたらたらと書いていきますが。

■「煙草」の使い方に痺れました…
通夜のシーンで、東松(喫煙者)と宮藤&惟高(非喫煙者)の溝を即座に示す。
東松が宮藤を追い出した後の役員会の席上で、煙草を吸い始める(今どき会議室で煙草吸わないけど、そのあり得ないことが許される空気、そして、灰皿を持ってくる役員までいやがる。東松が支配するんだというインパクトがすごい)。
ここで煙草の活用は終わりかと思いきや。
惟高がアメリカから戻ってくるやいなや、消される煙草、そして、東松の終焉。
おおー。

■コーヒーも
最初に高野がうっかりコーヒーを溢す(この後、歯がゆさを抱えることになる)。
終盤、速水が苛立ち紛れにコーヒーを叩きつける。
最初は「なぜ、高野がコーヒーを溢すシーンがわざわざあるんだろ?」と思ったんだけど、最後まで観ると、飄々としているベテランの速水でさえも歯がゆさを抱えることがあるのだと、高野のシーンとの対になっていることに気づいて面白かったです。

■あの高校生も。
あの書店であの高校生とあの会話をすることがどこで効いてくるんだろうと思ったら、最後の最後で。鳥肌が立つ心地よさ。
高校生が小説を買う理由として、映像化されていないから小説を読むしかない、と言ったことを話しますが、『騙し絵の牙』はもともと大泉洋さんをイメージして主人公をあてがきした小説である(ということは最初から映像化を狙っていた?)ので、矛盾というか、皮肉というか、なんか面白いですね。

■犬も…
最初に出てくる、社長が死ぬ原因になった犬。
犬が急くように走る姿と、高野が原稿を読みすすめる高揚感を重ねているだけじゃなくて、東松も走らされまくってビジネスマンとしての死に向かってたのか…とかいろいろ考えました。高野は走らされるんじゃなくて、自分で走ることを最終的に選んだってことなのかなーとかも考える。

■仕事って楽しい。
登場人物が価値観や方向性は違うけれど、みんな仕事を楽しんでいるのがすごく気持ちいい!矢代くんだって、自分の役割を全うしてるし。仕事の楽しさ、働く喜びを感じて前向きになれました。

■速水は結局…
原作未読で、映画は1回しか観ていないので、大きな間違いだったら申し訳ないんですが…
速水は編集者として原点回帰した。
高野はビジネスを開拓した。
それらが相互作用によって起きた。 ってことです、よね…?

■もっと騙してほしかったなぁ
『ドクター・デスの遺産』で木村佳乃さんと柄本明さんが公開後もしばらくシークレットキャストになってましたが、あれくらい騙してほしかったなーと思いました。予告でリリー・フランキーさんが出ちゃってるので、矢代聖の本体がリリー・フランキーさんであることはすぐに気づいてしまいました。
でも、本筋の、会社の舵取りの部分のからくりは全然分からなかったので、騙された!という楽しさは十分ありました。

■二階堂先生、素敵。
モードっぽい衣裳を着て、お帽子被って撮影しているシーンが「ぎゃー、やばい、かっこいい、もっと見せて!」でした。お歌も素敵でした。


だらだらと書きましたが、これくらいで。
こういう作品ってもう一度観たくなりますよね。次はいつ行こうかなぁ。