映画館に住みたい。

邦画を映画館で観るのが大好きな40代がtwitterでネタバレを書けずにblogへ流れてきました。

ネタバレあり/『ヒノマルソウル』観ました。

試写会で『ヒノマルソウル』を観ました。

具体的なエピソードはあまり書いていないのですが、話の流れには触れていますので、ネタバレを含むひとりごとです。

ひとりごとの最後のほうで少しキツいことを書いています。

 実話を基にしているので結末は知っているのに、終盤はぐっと拳を握って「がんばれ!」と言いたくなりますし、試写会の会場は途中で泣いているような音があちこちから聞こえたり(私も泣いたよー)、静まり返ったりして、みんなで競技を見守っているかのような一体感と緊張感があって、気持ちよかったです。

田中圭さんが演じた西方さんが挫折から直線的に立ち直っていくわけではなく、行きつ戻りつと葛藤し続ける姿は「分かるよ、その気持ち」とは決して言えない重さがありました。

作品の序盤は西方の挫折、中盤はテストジャンパーそれぞれの持つ葛藤や思い、終盤はスキージャンプ団体決勝の舞台裏。西方さんが主人公ではあるけれど、他のテストジャンパーも深く印象に残ります。
特に、山田裕貴さんが演じた高橋がとても素敵。普段はとってもチャーミングなんですが、ジャンプシーンで、はっとするほど美しい表情を見せるんですよ…。テストジャンパーが寄せ集めた集団で、持っている思いは各々違う。そんな中で場の空気を作る存在としてこんな人がいたらいいなと思う全てを持っているような人物、って普通だったら絵空事っぽくなりそうだけど、とても自然なんですよね…。高橋選手がそういう方だったのか、脚本が良いのか、山田さんの演技が素晴らしいのか。多分全部そうなんだと思うんですけど。ほんと、高橋、素敵。高橋をまた観たいので公開されたらまた行きます。

あとは、土屋太鳳さん。すごく良かった…。この奥さん、全部分かってるんだろうなっていう安心感がある。包み込む優しさと、言うべきことは伝わるようにきちんと言う強さ。太鳳さんがそこにいるだけでにじみ出てくるものがあって、奥さんが出てくるシーンは「きたぁ!!」みたいな(笑)。素敵な夫婦でした。

西方は主人公だけど、物語を引っ張っていく存在ではないんですよね。
なので、周囲に様々な反応を返しながら変化していく西方さんを演じる田中圭さんの演技を楽しむ、みたいな。それは観る前に想像していたのとは違ったけれど、いろんな表情が観られて楽しかったです。



ここからはちょっとキツいことを書いているので、読みたくない方はここまでで。



ふたつあって。

ひとつはこの作品に限らないんですが、話の流れと役者の表情だけで「こういう気持ちなんだろうな」と分かるカットで敢えて(不自然に)心情を語らせる台詞を入れるのは何なんだろう…と思います。とてもいい演技をしていても、観客もそこまで頭悪くないので「いやいや分かるし…」と思うはずですし、私は一瞬冷めます。
でも、そういうふうになっちゃうのはなんか分かる気はする。客が正しい答えを求める傾向があって、それに応えてるという可能性はあるんだろうな。個人的には、答えを考えるのは好きだけど、正しい答えがほしいわけじゃないし、共感できなくても全てが分からなくてもそんなもんだろ…と思います(だって、普段の人間関係だってよく分かんない人いるし)。

もうひとつは、会場などの描き方が全くオリンピックに見えない。国内大会にしか見えないです。ここをきちんとしていればもっと感動が深かったのでは?と残念。
いくつか原因があると思います。
オリンピックって巨額のお金がかかっているだけあって会場が非常に華やかですが、それを映画の予算で再現するのは相当難しいと思うんですよね。けど、VFX等でもう少しどうにかならなかったのかなと思います。現実のオリンピックの映像をたくさん観ているので、物足りなさすぎます。
あとは、オーディエンス、報道陣、競技スタッフなど、日本人しかいませんでしたが、日本人以外の方を入れてほしかったです(選手は待機スペースに外国人の方がいましたけど)。多分いなかったと思うんです。いたとしても、日本人ばっかりだったな…という記憶が残ってしまっていて、世界各国から観戦に訪れるオリンピックというイメージとは程遠かったです。
製作費の問題だったのかなと思うんですが、他のシーンも脚本や演技以外の部分での物足りなさを感じるところがあり、少々残念な気がしました。
会場のセキュリティ的にこれはないんじゃないかなと思うシーンもちょっとあったりしましたね…
現実だけど、非日常的な場所を作って描くというのは結構難しいんだなと思いました。いっそ、非現実のほうが正解なんてないから描きやすいんでしょうね。


最後はキツいことを書いてしまいましたが、映画館でみんなで観戦している気分で観るのが楽しい作品なのでオススメです。